●ファセットカット●

「ファセット」というのは「面」という意味があります。つまり原石を面の状態で研磨していき、その面の角度をいろいろ変えたり、組み合わせて研磨する方法をファセット・カットといいます。
 たとえば、ダイヤモンド、エメラルドのような透明の石はこの方法で研磨しています。
 日本のプロは、特別な機械を使わず、手の微妙な角度だけで石を削り込んでいく方法をとっています。しかし、私たちアマチュアのジェム・カッターの場合は特別に設計されたファセッターと呼ばれる機構の付いた研磨機を使用しないとなかなかうまくいきません。練習し、技術を磨けば、誰でも複雑なファセット・カットができるようになるでしょう。
 この研磨には専用のダイヤモンドディスク、銅板の回転板、あるいは錫の回転板などが必要ですし、ダイヤモンドペースト、ダイヤモンドパウダーを使って、研磨していきことが多いようです。もっとも、単純な面の構成なら、鋳鉄板とコランダムパウダーがあれば、誰でも簡単に面を作ることができるでしょう。
 このファセット・カットはアメリカなどでは、一般の人たちまで普及していますが、日本ではまだそこまで進んでいないようです。
 しかし、一足跳びに難しいファセット・カットに入るのではなく、カボッション・カットと呼ばれる、上面を滑らかなカーブを持った曲形に磨きあげ、下面を平面または緩やかなカーブを持った曲面に仕上げる研磨方法をまずマスターする方がいいでしょう。
 ところで、日本でストーン・ハンティングされる石は、カボッション・カットに適した石が多く、ファセット・カットに使用する石は世界各国から輸入した石を使用することになります。このファセット・カットの技術をマスターし、原石さえあれば、町の宝石屋さんで売られている宝石と同じようなものを作り上げることができるようになります。このファセット・カットは、主にダイヤモンドなど透明な宝石の研磨に使われていますが、アマチュアではダイヤモンドを研磨することはまずありません。もっとも、将来ダイヤモンドの原石がたやすく入手できるようになればアマチュアの方でも挑戦することになるかもしれません。